日小獣の動物看護師育成事業
動物看護師制度確立に向けた動物看護師育成事業の目的は、動物看護師を獣医療の一翼を担う専門職として社会に定着させることです。また、動物看護師は獣医師のよき協力者でありパートナーでなければなりません。
一般的に動物の飼育者たちは、獣医師や動物看護師について共に獣医療を提供する専門家集団であると考えているでしょう。もし、「動物看護師こそが、自らの動物の命を預けても良い専門職である」と飼い主たちが評価してくれるようになれば、社会的に動物看護師の価値は高まり、かつ社会になくてはならぬ職種として認識されていくものと考えられます。このことを具現化していくためには認定試験のみを実施し、認定証を発行するだけではなく、適正な動物看護師教育のための基準を作成する必要があります。
以上の基本構想をもとに、日小獣は以下のとおり、動物看護師育成事業を展開しています。
- 動物看護学全書の刊行
動物看護師は高い倫理観と獣医療専門職としての使命感を持ち、時代に適応する学術知識ならびに技術を有する必要があります。また、より良い動物看護師を育成していくためにはその基準となる最良の教材を提供していくことが最も重要なことと考えられます。このことを具現化するために、日小獣では、1999年以来、動物看護学全書を発行してきました。
| 第1巻 |
動物看護のための動物看護学概論 |
山縣多加史・純次 |
| 第2巻 |
動物看護のための小動物解剖学 |
牧田登之 |
| 第3巻 |
動物看護のための小動物生理学 |
岡哲朗 |
| 第4巻 |
動物看護のための小動物衛生学 |
岡本有史 |
| 第5巻 |
動物看護のための小動物行動学 |
森裕司・武内ゆかり |
| 第6巻 |
動物看護のための倫理と法 |
池本卯典 |
| 第7巻 |
動物看護のための小動物臨床検査 |
笠原和彦 |
| 第8巻 |
動物看護のための小動物栄養学 |
阿部又信 |
| 第9巻 |
動物看護のための小動物内科学 |
宇塚雄次 他 |
| 第10巻 |
動物看護のための小動物外科学 |
渡辺泰夫 |
| 第11巻 |
動物看護のための小動物繁殖学 |
筒井敏彦 |
| 第12巻 |
動物看護のための小動物皮膚病学 |
岩崎利郎 他 |
| 第13巻 |
動物看護のための歯科学 |
幅田 功 他 |
| 第14巻 |
エキゾチック動物の看護 |
斎藤久美子 |
| 第15巻 |
動物看護のための実務講座 |
斎藤久美子 他 |
| 第16巻 |
動物看護のための小動物寄生虫学 |
佐伯英治 |
(平成18年3月に全巻発刊を完了予定)
- 認定校の選定
動物看護師認定校の選定は次のとおり行われています。すなわち、日小獣動物看護師養成校認定基準に従って、カリキュラム、施設および設備内容、教官・スタッフ、地元獣医師会との協力体制などについて書類審査や現地調査を行い、委員会審議、理事会の承認を経て、認定校が選定されます。近年、認定審査においてもっとも重要視されるポイントは、養成校と地元獣医師会との間に十分な協力関係あるかどうかです。また、日小獣、認定校および地元獣医師会の3者が一体となってこそ、充実した動物看護師教育が実現できるものと考えられます。
- 認定校に対する集中講義
認定校は毎年1回以上の集中講義受講が義務付けられています。また、日小獣では各認定校に講師を派遣し、人獣共通感染症や獣医療倫理の原則について、外来生物法、動物愛護法、狂犬病予防法、感染症法ならびに家畜伝染病予防法等の関連法規について講義を行っています。集中講義への講師派遣は単に講義のみに終わることなく、認定校との教育問題に関する協議や各地方の獣医業界の個別問題を話し合い、認定校が日小獣と共に、より良い教育を推進できるように協力しています。
- 認定校協議会、認定校専任講師懇談会の開催
協議会では長期的、全国的展望にたった動物看護師教育のあり方について、懇談会では現場的、個別的教育問題の協議を行っています。
- 認定試験の実施、認定証の交付
認定試験は認定校の教育内容に基づいています。また、試験内容は看護学全書が中心となっているため、認定校卒業生以外の一般受験者にとっても無理なく受験することができます。認定試験出題内容については、年毎に改正されています。詳細についてはJSAVAニュース 「受験案内」を参照してください。
動物看護師制度確立にむけて
我国における小動物獣医療の発展と充実は、全国レベルで高度獣医療が広められることのみで、成し遂げられるものではありません。この中で、なぜ動物看護師制度の早急な確立が必要なのでしょうか?
第1の理由は、小動物獣医療現場では飼育動物および飼育者に厚みのある獣医療サービスを提供していかねばならないことにあります。すなわちこのことは、動物看護師が診療助手として専門職の職域を保障されること、そして看護や保健衛生指導面においても、これを担当する専門家として動物看護師の役割を広げていくことにあります。
第2の理由は、獣医療の中における人獣共通感染症にかかわる業務として、動物看護師の役割分担が増えてきたことです。
第3の理由は、野生動物、環境保全領域での獣医療が果たす役割が増え、獣医師がこの業務を遂行する上で、動物看護師にもお手伝い役として携わってもらう必要が出てきたことです。
以上の背景に鑑み、動物看護師の制度化(法制化)は獣医療にとって早急なる対応がせまられているわけです。
○ 動物看護師の業務内容、業務範囲を明確にし、職務権限を法的に保障し、その責任を課していかなければいけません。
当然のことながら、動物看護師の法制化は、獣医師でないものが行う獣医療類似行為の防止がその重要な要点になるわけですが、真の目的は、獣医療過誤を最小限にとどめ、獣医療ミスの無い理想的な小動物診療体制を確立するところにあるのではないでしょうか。
「掃除のおばちゃん」から「動物看護師」への進化は獣医師の認識の向上と、看護師の仕事への誇りが有って、初めてかなうものと思われます。
筆者 動物看護師委員会委員長 石黒利治 |