胃がんリスクを調べるABC検診(ペプシノーゲンとピロリ菌の検査)に注目
地方自治体が実施している胃がん検診は、造影剤(バリウム)を飲んでX線(レントゲン)を当てて、胃の形や陰を見る胃部X線検査です。胃を外側から見るX線検査では、胃の形状や陰から胃がんや胃潰瘍を発見することができても、胃がん発症と関係が深いピロリ菌の存在まではわかりません。
X線検査で胃がんや胃潰瘍の疑いがあると判明した場合、危険因子であるピロリ菌の存在も疑われますが、X線で陽性であると確定は出来ません。逆にピロリ菌が存在しても、胃に異常がなければ「異常なし」とされ、ピロリ菌はそのまま放置されることになりかねません。
ピロリ菌の感染は、内視鏡で胃の内部の組織を採取して調べたり、呼気や便を調べたりしないとわかりません。内視鏡肺の中を直接見ることができるので、X線に比べて胃内部の状態を詳しく観察することができます。
胃がんを調べる検査として住民検診で長らく実施されているX線検査は、体外から胃の病変の陰を観察する方法ですので、医師が直接病変部を観察することはできません。そこで登場したのが胃カメラを口・鼻から入れて、胃を直接観察する内視鏡検査です。
昔の胃カメラは直径が太く、飲み込む際に患者さんへの負担も決して小さくはありませんでしたが、高性能・小型化が進んだ現在は負担も軽減されており、X線撮影と内視鏡が今日の胃がん検査の中心的な役割煮を担っています。
最近注目されている胃がんのリスク判定検査として、ペプシノーゲン検査というものがあります。胃液中に分泌されているペプシノーゲンの99%は胃の中にありますが、残りの1%が血液に流入するので、採血してペプシノーゲンの値を測定すること胃の異常の有無がわかるという仕組みです。
胃は加齢やピロリ菌の感染などによって、胃の粘膜が薄くなる萎縮を起こしますが、萎縮の程度が進んだ胃はそうでない胃に比べてがんのリスクが高いことが判明しています。ペプシノーゲンを検査することで胃粘膜の萎縮の有無や程度が分かるのです。
胃がんリスクを調べるペプシノーゲン検査と抗ヘリコバクター・ピロリ抗体検査を合わせた「ABC検診」が近年普及しています。体にウイルスや最近が侵入すると、体はそれに抵抗するため抗体という物質をつくります。胃がんの危険因子の一つであるピロリ菌に感染していると抗ヘリコバクター・ピロリ抗体ができるので、血液、尿、唾液等でそれを調べるのです。
ABC検診は、血清ペプシノーゲンと抗ヘリコバクター・ピロリ抗体がそれぞれ陽性もしくは陰性であるかを組み合わせることによって、胃がんの発症リスクをAからD段階まで分けて評価を行います。
ABC検診も胃がんの有無を直接診察できる検査ではありませんが、将来リスクが高い人を抽出するためには有効です。しかし、血液検査だけでは、胃の内部を正確に把握することはできないので、検診で引っ掛かった人には内視鏡による精密検査が必要となります。